日本の食料自給率はカロリーベースで約38%(2021~2023年度実績)と、先進国の中でも極めて低い水準にあります。食料自給率とは、国内で消費される食料のうち、国内で生産されている割合を示す指標であり、日本の場合、6割以上を海外からの輸入に依存している現状です。
2. 現状:日本の食料自給率の実態
- カロリーベース自給率:約38%(2021~2023年度)
- 生産額ベース自給率:61~64%(年度により変動)
- 穀物自給率:28%(2013年)
- 飼料自給率:25~27%(2023年度)
品目 | 自給率 |
米 | 97% |
小麦 | 12% |
蕎麦 | 21% |
大豆 | 6% |
牛肉 | 36% |
野菜 | 77% |
飼料 | 25% |
米や野菜は高い自給率を誇りますが、小麦・大豆・飼料などは極端に低く、畜産物の自給率も飼料輸入依存により実質的に低下しています。
3. 歴史的推移と背景
- 1946年:食料自給率88%(戦後直後)
- 1960年:79%
- 2000年代以降:40%前後で横ばい
- 2017年~:38%前後
戦後の復興とともに食生活が欧米化し、パンや肉類の消費が増加。これらは小麦・飼料の輸入に依存しているため、自給率が大きく低下しました。
4. 問題点とリスク
- 安全保障上のリスク:海外からの輸入に依存することで、国際情勢や自然災害、パンデミックなどによる供給停止リスクが常に存在します。
- 食の安全・安心への懸念:輸入食品には日本国内で禁止されている農薬や添加物、遺伝子組み換え作物などが含まれる場合があります。
- 国内農業の衰退:輸入農産物の増加により、国内農家の経営が圧迫され、農業就業者の減少や耕作放棄地の増加が進行しています。
- 経済的脆弱性:為替変動や国際価格の高騰によるコスト増加が家計や産業に直撃します。
5. 国際比較
国 | 食料自給率(カロリーベース) |
フランス | 約100% |
アメリカ | 約90% |
ドイツ | 約80% |
イギリス | 約60% |
日本 | 約38% |
日本の自給率は先進国の中で最低水準にあり、特に穀物や飼料の自給率の低さが際立っています。
6. 政府の取り組みと課題
- 目標設定:2025年度までにカロリーベース自給率45%、2030年度も同様の目標を掲げています。
- 対策:国産農産物の消費拡大、生産努力目標の設定、飼料自給率の向上、地産地消の推進など。
- 課題:農家の高齢化・後継者不足、耕作放棄地の増加、消費者意識の低さ、輸入農産物への依存体質など。
7. 解決策と市民の役割
- 地産地消の推進:地域で生産された農産物を積極的に消費する。
- 食品ロスの削減:食べ残しを減らし、無駄のない食生活を心がける。
- 農業支援・理解の促進:農業体験や農産物直売所の利用、農業への理解を深める。
- 政策への関与:食料自給率向上に関する政策提言や、選挙を通じて声を届ける。
- 教育の充実:食育を通じて、食料自給率の重要性を次世代に伝える。
8. まとめと今後の展望
日本の異常に低い食料自給率は、安全保障・経済・社会のあらゆる面で大きなリスクとなっています。政府は自給率向上を目標に掲げていますが、達成には市民一人ひとりの意識改革と行動が不可欠です。
今後は、地産地消の推進や食品ロスの削減、農業支援の強化など、多角的な取り組みが必要です。また、国際情勢や気候変動の影響を考慮し、持続可能な食料供給体制の構築が求められます。
食料自給率の向上は、単なる数字の問題ではなく、国民の健康と安全、日本の未来を守るための重要な課題です。
9. 出典・参考資料