PAPSS(Pan-African Payment and Settlement System)は、2022年1月13日にアフリカ連合(AU)とアフリカ輸出入銀行(Afreximbank)によって正式に開始されたリアルタイムグロス決済(RTGS)インフラです。
このシステムは、アフリカ大陸自由貿易協定(AfCFTA)の運用を補完し、アフリカ諸国間の国境を越えた決済を現地通貨で行うことを可能にします。
「アフリカは豊富な資源(ナイジェリアの石油、コンゴのコバルトなど)を持ちながら、経済的な独立を達成できていなかった。国際取引では米ドルやユーロ依存のシステムが支配的で、アフリカ内貿易でも第三通貨を通じた高コストな決済が問題だった」
例えば、ガーナとナイジェリアの取引はこれまでニューヨークの銀行を経由し、追加の手数料と時間がかかっていました。PAPSSはこのような課題を解決するために設計されました。
PAPSSの決済プロセスは以下の5ステップで構成されます:
このプロセスは120秒以内に完了し、従来の方法と比較して大幅な時間とコストの削減を実現します。
カテゴリ | 詳細 |
---|---|
取引コストの削減 | 現在80%以上がアフリカ外(ニューヨーク、ロンドン)を経由。PAPSSで年間50億ドルのコスト削減見込み |
アフリカ内貿易の増加 | 現在15-18%のGDPだが、5年以内に30%まで増加可能と予測 |
アフリカ通貨の強化 | 外国通貨依存を減らし、アフリカ通貨の地位向上 |
金融包摂の促進 | 銀行口座を持たない人々(特にモバイル決済利用者)へのアクセス拡大 |
経済統合の推進 | 将来的に単一アフリカ通貨の基盤形成に寄与 |
Afreximbankは、PAPSSの決済最終性を支援するため、初期500百万ドル、将来的には30億ドルの資金を提供しています。
米国政府のtrade.gov(2022年5月11日)はPAPSSをアフリカ内貿易の「ゲームチェンジャー」と評価。
ウィキペディア(2023年6月16日)は、2024年末までにカリブ海地域への展開を計画していると報じています。
Pan African Review(2022年5月6日)はPAPSSを「革命」と位置付け、取引確認時間の短縮効果を強調。
2025年7月30日時点で、NHK、朝日新聞、日本経済新聞などの主要メディアではPAPSSに関する具体的な報道が確認できませんでした。
日本のメディアはアフリカ経済問題に触れる場合でも、モバイル決済(M-Pesa)や中国との経済関係に焦点を当てる傾向があります。
PAPSSの成功には以下の課題が存在します:
しかし、2025年7月にはモロッコが17番目の参加国として加入しました(Afreximbank、2025年7月7日)。
PAPSSはアフリカの金融独立と経済統合に向けた重要なステップです。西洋・非西洋メディアはそのポテンシャルを認識していますが、日本のメディアでは報道が限定的です。
今後の展開、特に単一アフリカ通貨への道のりは課題が多いものの、PAPSSの成功はアフリカ全体の経済発展に寄与する可能性があります。
調査日:2025年7月30日|情報源:trade.gov、Pan African Review、Afreximbankなど