カウンセルオンフォリンリレーションズ:アメリカの同盟国は核を持つべきである の最新分析詳細

本稿は、Council on Foreign Relations(CFR)刊行の雑誌『Foreign Affairs』2025年11月19日号掲載記事「America’s Allies Should Go Nuclear」(著者:Moritz S. Graefrath および Mark A. Raymond)を主な基盤とし、各種補足報告から再構成した資料です。記事はCFRの公式見解ではなく寄稿者の意見ですが、米国の戦略的議論として注目されています。

概要

現在の国際秩序は、米国の同盟国が核兵器を持たないことで依存度が高くなり、米国単独の負担が増大している一方、中国やロシアの挑戦が激化しています。この記事は選択的核拡散(selective proliferation)を提唱し、カナダ、ドイツ、日本などの信頼できる同盟国に核武装を奨励することで、米国は負担を軽減しつつ、同盟全体の抑止力を強化できると主張します。特に日本については、中国封じ込めの鍵として核保有が米国にとって有利だと強調。核拡散が秩序を崩すのではなく、ルールベースの国際秩序を支える民主主義国連合を強固にする可能性を指摘していますが、リスクも伴うとして慎重な管理を求めています。

この提案は、米国の「過度な拡張」(overextension)を是正し、同盟国が自立的に地域防衛を担う道筋を示すものですが、核不拡散体制(NPT)の転換を意味し、国際的な論争を呼びそうです。

1. 現在の核不拡散体制の限界と脆さ

従来の核不拡散政策は、冷戦後の米覇権を前提に機能してきましたが、現在は崩れつつあります。ロシアのウクライナ侵攻や中国の軍拡、北朝鮮の核開発が進む中、米国は欧州・アジアの両方で同盟を守る負担が増大。トランプ政権時代の同盟軽視や、米国内の孤立主義傾向が、同盟国の不安を高めています。記事は「米国の厳格な非拡散 adherence が、かえって同盟の脆さを生んでいる」と指摘。核を持たない同盟国は、米国の「拡張抑止」(extended deterrence)に過度に依存し、それが疑わしくなると地域の不安定化を招くリスクを強調します。

2. 選択的核拡散の提案と対象国

著者は、無差別な核拡散ではなく「選択的」なものを提唱。対象は、民主主義が成熟し、軍の文民統制が確立した信頼できる同盟国——カナダ、ドイツ、日本——に限定します。これらの国は、ルールベースの国際秩序を支持する「ステークホルダー」であり、核保有が秩序の破壊ではなく強化につながると主張。核武装により、これらの国は地域防衛の責任をより多く担い、米国の軍事依存を減らせる。記事のキー引用:「The United States would do well to reconsider its strict adherence to nonproliferation and encourage a small set of allies—namely Canada, Germany, and Japan—to go nuclear.」

3. 日本への核武装の具体的な戦略的メリット

日本については特に詳述。中国の台頭に対し、核保有が「強力なローカル同盟」を形成し、米国の中国封じ込め目標を達成すると指摘。日本の地理的優位(島嶼国)により、核抑止は即時的・確実で、中国が米国の遠隔コミットメントを疑う隙を与えません。また、米国の同盟コミットメント変動(例:トランプ時代の優先順位変更)へのヘッジとしても有効。核武装日本は、中国にエスカレーションのコストを強いる「追加層」を提供し、台湾有事や東シナ海紛争での抑止力を高めます。

4. 米国への利益と軍事負担の軽減

米国にとって最大の利点は負担軽減。欧州ではドイツ、カナダ(NORAD統合)の核保有で大陸防衛を移譲可能。アジアでは日本が中国対応の主軸となり、米国は本土防衛や他地域に集中できます。軍産複合体の影響下で拡大した米軍展開を是正し、財政的・人的負担を減らす。西側指導部が「同盟依存」を維持したがるインセンティブを疑いつつ、著者は「同盟国の自立が真の強さ」と冷静に分析します。

5. 中国・ロシアに対する抑止力の強化

核武装同盟国は、修正主義国(revisionists)への統一戦線を形成。ロシアの核威嚇や中国の領土拡張主義に対し、複数核保有国による連合抑止が有効。単なる米国の核傘より、地理的に近い同盟国の核が「即時報復」の信頼性を高めます。記事は、これが「規範的安定」(normative stability)も強化し、領土一体性などの国際規範を守ると主張。

6. 潜在的なリスクと管理策

リスクは認めつつ、最小化可能と評価。事故リスクは、これらの国のプロフェッショナル軍と文民統制で低い。連鎖拡散(knock-on proliferation)は、対象国にライバルがいないため起こりにくい(例:カナダ核化でメキシコが追従する可能性なし)。国内世論反対(日本の原爆被害記憶、ドイツの平和主義)は課題ですが、「安全強化と秩序維持」の説得で克服可能。管理策として、NPTからの合法的離脱、米国の外交支援、「無先制使用」政策、技術・指揮統制支援を提案。

全体のニュアンスと警告

この分析は楽観的ですが、深刻な転換点を警告しています。核拡散を「悪」とみなす従来観を覆し、「信頼できる手に核が増える方が良い」とするリアリズムは、軍産複合体や覇権維持勢力の隠れた意図を思わせます。万一管理失敗すれば、誤算や事故の連鎖で人類的危機を招く可能性を否定できません。日本にとって核保有は抑止強化の一方、憲法・世論・近隣関係の劇的変化を伴い、慎重論が優勢です。著者は「責任ある管理で秩序は強化される」と結論づけますが、現実の地政学カオス下では、こうした提案自体が新たな不安定要因となり得る——それが最大の警告です。