イスラエルの作り方―1870年からの歴史



アレックス・クライナー氏の紹介

アレックス・クライナー(Alex Krainer)氏は、1967年にクロアチアのリエカで生まれ、旧ユーゴスラビアの社会主義時代に育ちました。 二言語(クロアチア語とイタリア語)の家庭で育ちました。

経歴

1992年にスロベニアのリュブリャナ大学で哲学の学士号を取得し、イタリアのジェノヴァ大学で科学哲学を専攻して大学院を修了しました。 その後、スイスと米国で生活・勉強し、1995年のクロアチア独立戦争で軍務に就きました。

金融分野では1990年代初頭から活躍し、ニューヨークのヘッジファンドOmega Advisorsでシニアポートフォリオマネージャーを務めました。 2001年にKrainer Analyticsを設立し、2008年の金融危機予測で注目を集めました。 著書に『The Grand Deception』など、地政学と金融をテーマにしています。

現在の活動

現在はモナコ在住の市場アナリスト、著者、元ヘッジファンドマネージャーとして活動中です。 Substackで地政学・経済記事を執筆し、ポッドキャストで中東情勢やウクライナ戦争を論じています。



アメリカの関与不可避と国内の反感

イスラエルが戦争を開始すれば、トランプ大統領がこの戦争への関与を回避することは不可能に思えます。そして、イスラエルが戦争を始めるのは時間の問題であり、それは近い将来訪れる可能性が高いです。アメリカがこれに関与することは極めて危険であると考えます。加えて、現在、我々がこれらの話題―特にアメリカ国内におけるイスラエルの役割について―を頻繁に耳にする事実、そしてタッカー・カールソン氏やキャンディス・オーエンズ氏のようなトランプ政権には属さないがその同盟者と目される人物たちが繰り返し言及している事実から察するに、米国の外交政策におけるイスラエルの影響力に対する根深い反感が存在していると私は感じます。

暴露と海外勢力による操作

私は、これらの現象は、チャーリー・カーク氏の暗殺以降に続いてきた暴露の一環であると考えています。つまり、アメリカ政府やアメリカ軍が、外国勢力によって操られ、彼らのために戦争を引き受けている実態を、アメリカ国民が知るための流れです。

責任転嫁のシナリオ

そして最終的に、もし戦争を回避できるのであれば、それはトランプ政権からイスラエルへ責任を転嫁する事前の準備とも言えるでしょう。他にもっと説得力のある説明は私にはできません。なぜなら、アメリカが中東で全面的にイスラエル側に立ち広範な戦争に突入した場合、得られるものは屈辱的な敗北以外に何もないからです。イランには、中東にあるアメリカの22の軍事基地を壊滅させる能力があり、戦域に展開するアメリカ艦船の一部、場合によっては全てを撃沈する能力まであることは誰もが認識しています。

イランの強化と地域的反発

さらに、イランは昨夏の12日間戦争当時よりも、今日の方がさらに強力になっている可能性があります。なぜなら、イランはすでに中国やロシアから新たな武器や装備品を受け取っているからです。また、パキスタンやエジプト、トルコのような国々からの「もうたくさんだ」という声もかつてないほど高まっています。これらの国々は、パレスチナ人民の大量虐殺を止めるため、実際にイスラエルに地上軍を派遣する覚悟すら示しています。

イスラエルと米国にとって自滅的なリスク

この種の戦争が引き起こされれば、イスラエルにとって自殺行為以外の何物でもありません。そして、アメリカがこの状況から抜け出すことができなければ、アメリカにとっても大きな痛手となるでしょう。その段階になれば、トランプ政権は誰かを「犯人」に仕立てなければなりません。そして、今まさにイスラエルを「犯人」に仕立て上げる準備が進んでいるのだと私は思いますし、それは正当なことであるとも思います。

イスラエルとイギリスの動機の理解

この件については他に説明がありません。私自身、イスラエルの立場、なぜイランを攻撃したいのか、そしてなぜイギリスが裏からイスラエルを全面的に支援しているのかも理解できます。誰もイギリスの役割を話題にしませんが、彼らは極めて積極的に動いてて、私はむしろイギリスこそが中東の諸紛争の「扇動者」と言っても過言ではないと考えます。

国内政治でのトランプへの致命的リスク

しかし、アメリカにとっては、これはトランプ大統領にとって事実上の政治的自殺行為とも言える状況です。現時点で、彼の最大の戦場は国内政治であり、来年の中間選挙で勝利することが至上命題です。中東で敗北すれば、それは政権にとって回復不能な決定打となり、葬り去る一撃となる可能性があります。

議会と有権者層の圧力・軍部粛清の予兆

同時に、トランプ大統領にはベンジャミン・ネタニヤフ氏に支配されているアメリカ議会の存在があります。そして、その支持基盤にはイスラエル寄りのユダヤ系シオニストやキリスト教福音派が非常に多く含まれ、米国有権者の中で大きな勢力を形成しています。これらの勢力こそがトランプ氏を強く動かしている原動力であり、これが例の全米軍の将官・提督を集めた異例の会議に繋がった理由でもあるのです。ピート・ヘグセス氏の「気に入らない奴は辞めろ」という発言にも象徴的ですが、トランプ氏自身も「気に入らなければ現場で即座に解任する」と言い放ちました。これは、今まで米軍に慎重な配慮をしてきた彼の姿勢から一変したもので、大規模な軍幹部粛清が準備されていることの兆候とも受け取れます。

歴史的な軍・政界の粛清

こうした粛清は歴史的に前例がないわけではありません。南北戦争期の1860年代、エイブラハム・リンカーン大統領は政府や軍部・政界に浸透した英国・南部・フランス勢力を排除するため、1万4千人から3万8千人を投獄しました。当時も政府維持のために強硬な粛清が必要だったのです。今回の異例な軍幹部召集も、その始まりを示すものかもしれません。

米帝国の失速とトランプ政権の変質を問う

アレックス氏に問いかける形で、「現状のアメリカ帝国は中東情勢を見失っているのではないか?そしてその決断を下すのは他でもなくトランプ大統領自身である。この政権や彼は選挙前と全く異なる人物に見える」という疑問が投げかけられました。

アレックス氏の回答―トランプの進化と西洋帝国の本質

「確かにあなたの指摘通りです。選挙中も大統領一期目も、トランプは“アメリカ・ファースト”を強調し、帝国主義的な世界への関与から脱却しようとしていた。シリア、アフガニスタン、果てはドイツからの米軍撤退まで目指していました。しかし英国公式訪問以降、何かが変化し、彼の発言・方針が変わったように見えます。強制的な方針転換か、あるいは偽装された“グローバリスト化”なのか。いずれにせよ、我々が把握するにはスケールが大きすぎる流れです。帝国の衰亡は数世代単位の時間がかかります。ローマ帝国が崩壊したのも200年以上かかった歴史であり、現代の西洋帝国も同様です。」

「古代ローマがカルタゴを滅ぼしたように、現代の西洋帝国もロシアへの“執念”を持ち続けています。これも一晩、一世代では終わらない闘争です。私は『西洋帝国』と呼んでいますが、米国自体が“本部”ではありません。真の本部はロンドン・シティにあり、戦後以降英国がアメリカを巧妙に利用してきました。軍事・経済・金融・政治・外交の全てを駆使して西洋帝国の利益のためにアメリカを動かしてきました。」

「反対勢力も米国内には依然として存在します。共和主義への回帰を目指す動きはしぶとく続いており、独立自体が“反帝国”の精神から始まった歴史があるからです。しかし民主主義構造さえ帝国維持に使われている現状で、完全な権力集中には中間選挙以降が勝負です。真のトランプ像が見えるのは任期終了以降になるでしょう。」

エリート層の超国家的性格とイスラエルの位置づけ

「米英エリートは自分を国家単位で捉えていません。彼らは“西洋覇権”のために動いており、国籍以上の連帯意識を持っています。そしてイスラエルの要素がどう機能しているのかも重要です。」

イスラエル創設の英国的ルーツと現代の隠れた利権

「イスラエルは英国帝国による長期プロジェクトの成果です。グレートシオニズム運動は19世紀1870年代に遡り、アルフレッド・ミルナーなどは東地中海への“特別な愛国的民族”植民を計画していました。オスマン帝国崩壊後、英国がパレスチナ委任統治を得てシオニズム計画は加速。サイクス・ピコ分割、バルフォア宣言(1917年)、そして第二次世界大戦後の1948年イスラエル国家成立―これら全てが英国主導です。」

「現在も英国は表に出ず、イスラエル軍の軍事訓練やガザでの偵察支援、IDFへの標的データ提供を“人質救出支援”と称して実施していますが、実態はガザの人口削減と支配権の確立が目的です。」

西洋帝国にとってのイスラエルの戦略的利用

「西洋帝国にとってイスラエルは“沈まぬ航空母艦”の存在です。イスラエルのユダヤ人は、帝国戦争(レバノン、ガザ、イラン等)を担う“消耗品”に過ぎません。建国理念は“ユダヤ人の祖国”でなく、より冷酷な構造です。資源・物流要衝として中東支配に欠かせません。ユダヤ人も、米英人も含め、“西洋帝国”にとっては覇権維持のための道具でしかないのです。」