イランの超極超音速ミサイルに関するレポート
レポート作成日: 2025年8月3日
概要: 本レポートは、イランの超極超音速ミサイル(極超音速ミサイル、Hypersonic Missiles)の最新情報を収集し、その技術的特徴、開発状況、実戦使用、迎撃可能性、および地政学的影響について検証します。情報は2025年8月3日時点のウェブおよびSNS上の投稿を基に分析し、特に「ファッターハ(Fattah)」シリーズや最近のイスラエルへの攻撃に関する主張に焦点を当てます。ロシアや北朝鮮との協力疑惑や、技術的限界についても検討します。
[](https://www.pbs.org/newshour/world/why-hypersonic-missiles-are-stirring-fears-in-the-conflict-between-israel-and-iran)[](https://en.wikipedia.org/wiki/Fattah-1)
1. イランの超極超音速ミサイルの概要
イランは、中東最大の弾道ミサイル保有国であり、近年、超極超音速ミサイルの開発を主張しています。以下のミサイルが「極超音速」として宣伝されていますが、その技術的定義や能力には議論があります。
- ファッターハ-1(Fattah-1): 2023年6月6日にイスラム革命防衛隊(IRGC)により公開された中距離弾道ミサイル(MRBM)。射程1400km、速度マッハ13〜15と主張。固体燃料を使用し、終末段階での機動性を持つとされる。核弾頭搭載の可能性も指摘されている。
[](https://en.wikipedia.org/wiki/Fattah-1)[](https://www.aljazeera.com/features/2023/6/7/iran-has-a-hypersonic-missile-what-does-that-mean)
- ファッターハ-2(Fattah-2): 2023年11月19日に公開された改良型。射程1500km、液体燃料を一部使用し、極超音速滑空体(HGV)を搭載。イスラエルを射程内に収め、迎撃回避能力を強調。
[](https://www.aljazeera.com/news/2023/11/19/iran-unveils-upgraded-hypersonic-missile-as-khamenei-touts-israel-failure)[](https://www.fdd.org/analysis/2023/11/21/iran-unveils-new-missile-it-claims-is-hypersonic/)
- ホッラムシャフル-4(Kheibar/Khorramshahr-4): 射程約2000km、1500kgの弾頭を搭載可能な液体燃料ミサイル。2023年5月に公開され、極超音速滑空体を搭載する可能性がある。北朝鮮の技術協力が疑われる。
[](https://www.washingtoninstitute.org/policy-analysis/next-generation-iranian-ballistic-missiles-technical-advances-strategic-objectives)[](https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_military_equipment_manufactured_in_Iran)
- ホッラムシャフル-5(Khorramshahr-5、噂段階): SNS上で射程1万2000km、マッハ16のICBMと主張されるが、公式確認はなく、プロパガンダの可能性が高い。
2. 最新の動向(2025年8月時点)
2.1 イスラエルへの攻撃とファッターハの使用
イランは2024年4月13日(「真の約束」作戦)と2024年10月1日(「真の約束II」作戦)でイスラエルに対し、それぞれ110〜130発および約150発の弾道ミサイルを攻撃に使用。ファッターハ-1が2024年10月1日の攻撃で使用された可能性が、ニューヨーク・タイムズの分析で指摘されている。2025年6月18日には、IRGCがファッターハ-1をテルアビブ攻撃に使用したと主張し、イスラエルの防空システムを突破したと述べた。ただし、イスラエルのアロー2/3やパトリオットシステムにより大部分が迎撃され、被害は限定的だった。
[](https://en.wikipedia.org/wiki/Fattah-1)[](https://breakingdefense.com/2025/06/how-iran-could-use-its-ballistic-missile-capability-to-strike-back-at-israel-analysis/)[](https://www.newsweek.com/iran-israel-missile-defensive-systems-hypersonic-2087124)
SNS上の投稿(例: @NobbyRaelian, @tsunnaky)は、2025年6月にイランの極超音速ミサイルがイスラエル防空網を突破し、テルアビブやベエルシェバに被害を与えたと主張するが、公式な証拠は不足している。
2.2 ホッラムシャフル-5の噂
SNS上で、ホッラムシャフル-5が射程1万2000km、マッハ16のICBMとしてテスト準備中と報じられた(例: @IranSpec, @negar_mo59)。これが事実なら、イランの従来の2000km射程制限を破るもので、欧州や米本土を脅かす可能性がある。しかし、公式発表や映像証拠がなく、専門家はプロパガンダの可能性を指摘。イランの工業能力ではICBM開発は困難とされる。
[](https://www.stimson.org/2023/irans-claims-of-developing-a-hypersonic-missile-raise-doubts/)
3. 技術的特徴と迎撃可能性
イランの極超音速ミサイルは以下の特徴を持つと主張されていますが、技術的限界が議論されています:
- 速度: ファッターハ-1/2はマッハ13〜15、ホッラムシャフル-4はマッハ10以上とされる。終末段階での高速性は迎撃の反応時間を短縮。
[](https://www.aljazeera.com/features/2023/6/7/iran-has-a-hypersonic-missile-what-does-that-mean)[](https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_military_equipment_manufactured_in_Iran)
- 機動性: ファッターハ-2はHGVを搭載し、大気圏内外で機動可能。ホッラムシャフル-4も終末段階での軌道修正が可能とされるが、米露中のHGVに比べ機動性は劣ると評価。
[](https://www.aljazeera.com/news/2025/6/18/how-has-iran-managed-to-pierce-through-israels-air-defence-systems)[](https://iranprimer.usip.org/resource/irans-ballistic-missile-program)
- 固体燃料と液体燃料: ファッターハ-1は固体燃料で迅速な発射が可能。ファッターハ-2やホッラムシャフル-4は液体燃料を併用し、射程延伸を狙う。
[](https://www.fdd.org/analysis/2023/11/21/iran-unveils-new-missile-it-claims-is-hypersonic/)[](https://www.washingtoninstitute.org/policy-analysis/next-generation-iranian-ballistic-missiles-technical-advances-strategic-objectives)
迎撃可能性: イスラエルのアロー2/3や米国のパトリオット、THAADシステムは、ファッターハ-1/2の迎撃に部分的に成功(2024年4月・10月)。しかし、HGVの機動性は迎撃を困難にする。専門家は、イランのミサイルが「真の極超音速兵器」(持続的なマッハ5以上での機動飛行)に該当するか疑問視し、従来の弾道ミサイルにHGVを付加したものと評価。イランの誇張された主張(例: 「迎撃不可能」)は、ロシアのキンジャールがパトリオットで迎撃された事例から、信頼性が低い。
[](https://www.pbs.org/newshour/world/why-hypersonic-missiles-are-stirring-fears-in-the-conflict-between-israel-and-iran)[](https://www.aljazeera.com/news/2025/6/18/how-has-iran-managed-to-pierce-through-israels-air-defence-systems)[](https://www.stimson.org/2023/irans-claims-of-developing-a-hypersonic-missile-raise-doubts/)
4. ロシア・北朝鮮との協力疑惑
イランの極超音速ミサイル開発は、ロシアや北朝鮮の技術支援を受けた可能性が指摘されています:
- ロシア: ファッターハ-1/2の急速な開発は、ロシアのキンジャールやオレシュニクの技術移転を疑わせる。ロシアはイランから短距離弾道ミサイルの提供を受けたが、極超音速技術の提供は未確認。
[](https://nationalsecurityjournal.org/irans-hypersonic-missiles-summed-up-in-4-words/)[](https://www.fdd.org/analysis/2023/11/21/iran-unveils-new-missile-it-claims-is-hypersonic/)
- 北朝鮮: ホッラムシャフル-4は北朝鮮の火星-10ミサイル(射程4000km)に由来し、2005年に技術移転があったとされる。北朝鮮の支援は液体燃料ミサイルの基盤を提供。
[](https://www.washingtoninstitute.org/policy-analysis/next-generation-iranian-ballistic-missiles-technical-advances-strategic-objectives)
- 限界: イランの工業基盤は、量産や高精度部品の製造に制約があり、ロシアや中国のような先進的なHGVの開発は困難。過去の偽装(例: カーヘル-313ステルス戦闘機)も、信頼性を下げる要因。
[](https://www.stimson.org/2023/irans-claims-of-developing-a-hypersonic-missile-raise-doubts/)
5. 地政学的影響
イランの極超音速ミサイルは以下の影響を及ぼしています:
- イスラエルへの脅威: ファッターハ-1/2はイスラエルを射程内に収め、テルアビブ到達時間は約400秒とされる。2024年10月の攻撃で一部が防空網を突破し、限定的な被害を与えた。
[](https://www.aljazeera.com/features/2023/6/7/iran-has-a-hypersonic-missile-what-does-that-mean)[](https://www.newsweek.com/iran-israel-missile-defensive-systems-hypersonic-2087124)
- 地域抑止力: サウジアラビアやUAEなど、米同盟国への脅威を強化。フーシ派(イエメン)やヒズボラ(レバノン)にミサイル技術供与も確認。
[](https://www.atlanticcouncil.org/blogs/menasource/yemen-iran-houthis-hypersonic-missile-israel/)[](https://www.fdd.org/analysis/2023/11/21/iran-unveils-new-missile-it-claims-is-hypersonic/)
- 軍拡競争: 米国のGPI(日米共同開発)やイスラエルのアロー4開発を加速させ、地域の軍事緊張を高める。
[](https://www.pbs.org/newshour/world/why-hypersonic-missiles-are-stirring-fears-in-the-conflict-between-israel-and-iran)[](https://www.aljazeera.com/news/2025/6/18/how-has-iran-managed-to-pierce-through-israels-air-defence-systems)
6. 検証と信頼性の課題
イランの主張には以下の信頼性の問題があります:
- プロパガンダ: ファッターハ-1/2やホッラムシャフル-5の性能は誇張の可能性。過去の例(カーヘル-313や量子プロセッサ偽装)から、実際の能力は限定的と推測。
[](https://www.stimson.org/2023/irans-claims-of-developing-a-hypersonic-missile-raise-doubts/)
- 証拠不足: ファッターハ-2の試験映像や詳細性能データが公開されておらず、2024年10月の攻撃でも残骸分析に依存。
[](https://www.fdd.org/analysis/2023/11/21/iran-unveils-new-missile-it-claims-is-hypersonic/)
- SNS上の誇張: ホッラムシャフル-5の1万2000km射程やマッハ16主張は、技術的・工業的限界から非現実的。
7. 結論
イランの超極超音速ミサイル(ファッターハ-1/2、ホッラムシャフル-4)は、中東での抑止力強化を目指すが、真の極超音速兵器としての能力は限定的。2024年のイスラエル攻撃でファッターハ-1が使用された可能性はあるが、イスラエルの防空システムにより大部分が迎撃された。ホッラムシャフル-5のICBM主張はプロパガンダの可能性が高く、工業基盤の制約から実現は困難。ロシアや北朝鮮の支援は推測されるが、証拠は不十分。地政学的には地域緊張を高めるが、戦況を変えるほどの影響は現時点で限定的です。
8. 推奨事項
- 情報源の確認: IRGCやイラン国営メディアの主張は、Al Jazeera、NYT、Reutersなどの検証と併せて評価。SNS上の情報は誇張が多く、慎重に扱う。
[](https://www.aljazeera.com/news/2025/6/18/how-has-iran-managed-to-pierce-through-israels-air-defence-systems)[](https://www.aljazeera.com/features/2023/6/7/iran-has-a-hypersonic-missile-what-does-that-mean)
- 継続的な監視: ファッターハ-2の試験やホッラムシャフル-5の開発状況を注視。残骸分析や衛星画像で実態を確認。
[](https://en.wikipedia.org/wiki/Fattah-1)
- プロパガンダへの注意: 「迎撃不可能」やICBM主張を過信せず、イスラエルの迎撃実績やイランの工業限界を考慮。
[](https://www.stimson.org/2023/irans-claims-of-developing-a-hypersonic-missile-raise-doubts/)
最終評価: イランの極超音速ミサイルは地域抑止力を高めるが、技術的・工業的限界からロシアや中国に比べ劣る。イスラエルや米国の防空システムは有効性を維持しており、誇張された脅威には慎重な検証が必要。
[](https://www.pbs.org/newshour/world/why-hypersonic-missiles-are-stirring-fears-in-the-conflict-between-israel-and-iran)[](https://iranprimer.usip.org/resource/irans-ballistic-missile-program)