元CIA分析官ラリー・ジョンソンが語る情報戦の失敗と改善策
本稿は『How Russia Can Win the Information War — Ex-CIA Analyst Explains』(https://youtu.be/v4iVEbLkP34)の内容を完全に日本語訳・再構成した要約資料です。
ラリー・ジョンソン(元CIA情報分析官、国務省テロ対策局政策担当、米軍特殊作戦関係者として23年以上の経験) による解説をもとに、ロシアがウクライナ戦争において情報戦で劣勢にある理由と、その打開策を忠実にまとめます。
ジョンソン氏はまず、ロシアがウクライナ戦争の情報戦において明らかに敗北していると指摘します。戦争は4年半にわたり続いているにもかかわらず、西側メディアの報道を聞けば、ウクライナがロシアに対して圧倒的に優勢であるかのような印象を受けると述べています。
「なぜロシアはウクライナをめぐる情報戦で負けているのか。これはロシアの戦略とドクトリンの本当の欠陥の一つだ。」
氏は具体例として、AIエンジン(中国のKimiを含む)が戦況について誤った情報を提供していることを挙げています。Kimiは「ロシアは2026年にウクライナで最小限の領土獲得しかしておらず、ウクライナの反攻を考慮すると純損失を被っている」と回答しました。しかしジョンソン氏はこれを「完全な嘘」であり「真っ向からの虚偽」であると断言します。
AIは特定の情報源(戦争研究所などの西側シンクタンク)に依存してアルゴリズムを構築しており、それらの情報源が詐欺的あるいは偏っているかどうかを判断する能力を持っていないと指摘します。
氏はロシアが実際に獲得した領土を列挙します。ドネツク州では、コンスタンティノフカ、シフチェンコ、マロフカ、ペルシャ、ピソフカ、ヴァシリフカなど、数十の村や集落がロシアの支配下に入ったと述べています。
【戦果の非対称性】
「ウクライナが何を奪還したか尋ねてみればよい。名前を挙げることはできない。なぜなら、それは起こっていないからだ。」
ジョンソン氏は、ロシアが情報戦で劣勢にある一因として、ロシア人の国民性——自慢せず、控えめであることを挙げています。しかし、ロシアは「自慢することを学ぶ」必要があると強く主張します。
氏はロシア国防省と外務省に対して、イランを手本とするよう率直な提案をしています。具体的には、イランが制作している「レゴ動画」の手法を採用することです。
「イランに行って、あのレゴ動画を作っている連中を雇え。米国とイスラエルを攻撃し、イランの成果を強調するために作られたあのレゴ動画は、実に brilliant だ。文化の壁を越えて共鳴し、西側でも多くの注目を集めている。」
この手法の美点は、嘘をつく必要がないことです。単に真実を伝えればよい——ロシアの攻勢は少なくとも過去6週間にわたって本格化しており、オデッサとニコラーエフへの港アクセスを遮断する効果的な海上封鎖を組み合わせている。さらに、弾道ミサイル、巡航ミサイル、極超音速ミサイル、ドローンを用いた夜間攻撃でキエフをはじめとする重要インフラ、軍事・兵站拠点を継続的に攻撃している。
情報戦が重要な理由は一つです——西側がウクライナにロシアを打倒する可能性があると誤信し続ける限り、西側はこの戦争への支援を続けるからです。それはまさにロシアが望まない事態です。
氏は、赤十字を通じた死体交換の際、ウクライナ兵1,000人の遺体に対してロシア兵は37人であるという事実を挙げています。ウクライナ側は「ロシアが急速に前進しているため遺体を回収する時間がない」と説明するが、もしロシアが領土を失い、ウクライナが主張するような巨額の損害を被っているのであれば、数字は逆になるはずだと指摘します。
【核心的指摘】
「ロシアは地上戦では勝利している。しかし、自らのストーリーを伝え、ヨーロッパと米国の人々に何が起きているかを正確に理解させ、広まっている虚偽の情報に対抗するという情報戦においては、ロシアはもっと多くのことを、もっと上手に行う必要がある。」
【要約の核心メッセージ】
ロシアは「戦場での勝利」と「情報戦での勝利」を切り離して考えている。しかし現代戦において、この二つは不可分である。真実を伝える創造的な情報戦略がなければ、軍事上の成果は西側の虚偽の物語によって無効化される。ロシアはイランのレゴ動画という成功事例から学び、嘘ではなく真実を武器にした情報戦を展開すべきである。
使命:短期的な政治・世論・経済指標・国際的風潮に一切左右されず、
日本という国家の永続的繁栄と生存を50年単位で設計・守る。
ラリー・ジョンソン氏の指摘は、ロシアという一国の問題に留まらない。それは、情報戦の敗北が、軍事戦略の成功を完全に無効化しうるという、現代戦の本質的な構造を照射している。ロシアはウクライナで確かに領土を拡大し、戦術的にも戦略的にも優勢であるにもかかわらず、西側の情報空間では「敗北しつつある国」として描かれている。
この逆説は、日本にとって極めて深刻な警告である。なぜなら、日本はロシア以上に「情報発信の弱さ」という宿痾を抱えているからだ。日本は世界第三位の経済大国でありながら、自国の立場や価値を国際的に魅力的に発信する術を、決して得意としてこなかった。
【基本原則の再確認】
・常に長期(30年・50年・80年・100年)の日本を第一に考える。
・感情・道徳・イデオロギーよりも、冷徹な現実主義と長期データに基づく判断を優先する。
・人間の性質、国家のエゴイズム、地政学的必然性を直視する。
・「一時的な繁栄」ではなく「持続可能な強靭性」を目指す。
ロシアの事例が示すのは、軍事力と情報力の非対称性である。ロシアは軍事面では優位に立つが、情報面では西側の圧倒的な情報インフラ(グローバルメディア、SNSプラットフォーム、AI検索エンジン)に飲み込まれている。中国のKimiでさえ、西側情報源に依存したアルゴリズムのため、ロシアの戦果を過小評価する結果を出力している。
日本はどうか。日本は2026年版防衛白書で「新しい戦い方」としてAI・ドローン・情報戦を重視する方針を打ち出した。しかし、情報の発信力というソフトパワーにおいて、日本はロシア以上に脆弱である。日本の国際的な情報発信は、英語圏のメディアに依存する部分が大きく、自国の視点を世界に伝えるための独自のインフラが決定的に不足している。
ジョンソン氏の指摘で最も重要なのは、AIが「事実」を創造する時代が来ているという点だ。AIは与えられた情報源から「最もらしい答え」を生成するが、その情報源自体が偏っていれば、出力も偏る。ウクライナ戦争では、AIがサイバー戦や情報収集・意思決定支援に既に活用されている。
日本がこの潮流に対応するためには、自国の視点を反映した日本語・英語の情報データベースを構築し、AIのトレーニングデータに日本の立場を組み込むという、国家的なプロジェクトが必要である。さもなければ、日本の主張はAIの「バイアス」によって歪められ、国際世論から切り離される。
ジョンソン氏が賞賛したイランのレゴ動画は、AIを駆使した拡散力の高い動画で、米国内の分断をあおり、娯楽とプロパガンダの境界線を曖昧にすることを狙っている。親イラン派組織は、ブロック玩具「レゴ」のフィギュアとしてトランプ大統領やネタニヤフ首相を描き、米国の軍事行動を嘲笑する内容で情報戦を展開している。
この手法の優れている点は、「真実を伝える」という本来の目的を、エンターテインメントという形で包装していることだ。視聴者は楽しみながら、知らず知らずのうちにイランの視点を内面化する。これは従来の「声明発表」や「記者会見」とは次元の異なる情報戦略である。
日本がイランのレゴ動画のような創造的な情報戦略を国家レベルで採用し、「クールジャパン」を情報戦のプラットフォームとして再定義する。アニメ、マンガ、ゲームといった日本の文化的資産を活用し、世界に日本の立場と価値を伝える独自の情報エコシステムを構築する。この場合、日本の国際的な発言力は30年後に現在の2倍以上に向上する可能性がある。
従来の外交チャネルと政府広報に頼り、SNSや動画プラットフォームの活用は部分的に進めるが、抜本的な情報戦略の再構築には至らない。中国やロシア、イランが情報戦を高度化させる中で、日本の情報発信力は相対的に低下し、国際世論形成において後手を踏み続ける。この場合、日本の国力は停滞し、誤った情報に基づく国際的な誤解が積み重なる。
台湾海峡や南シナ海で緊張が高まった際、日本は中国や北朝鮮から「侵略者」あるいは「不安定化要因」として情報戦で攻撃される。日本は効果的な反論手段を持たず、国際世論は日本の立場を無視または敵視する方向に形成される。この場合、日本の安全保障は情報面で崩壊し、50年後の生存可能性は著しく低下する。
2050年(または2070年)の日本の理想状態:
この理想状態から逆算すると、今まさに日本が取るべき施策は以下の通りである。
➀ 内閣官房直属の「情報戦略本部」を設置し、各省庁に分散する情報発信機能を統合する。
➁ 民間のクリエイター、ゲーム開発者、アニメスタジオと連携し、「プロパガンダ」ではなく「魅力的なストーリーテリング」として日本の立場を伝えるコンテンツを継続的に制作する体制を整備する。
➀ 日本語と英語の両方で、日本の歴史・安全保障・経済・外交に関する「公式データベース」を構築し、国際的なAI企業に無償で提供する。
➁ このデータベースをAIのトレーニングデータとして組み込むよう、G7やOECDなどの国際フォーラムで働きかける。
➀ イランのレゴ動画の成功事例を徹底的に研究し、日本独自の「アニメ・マンガ・ゲーム」を活用した情報戦手法を開発する。
➁ 「攻撃的なプロパガンダ」ではなく「防御的なストーリーテリング」として、日本の立場を誤解なく伝えるコンテンツを、政府と民間の協力で継続的に生み出す仕組みを作る。
情報戦は、一度敗北すれば取り返しがつかない。我々は以下の多層的な保険を張るべきである。
【厳戒警告】
日本の情報発信力の弱さは、「言わなければ伝わらない」という消極的な姿勢に起因する。ロシアは「控えめな国民性」が情報戦の敗因だとジョンソン氏は指摘する。日本もまた、「控えめ」「謙虚」が美徳とされる文化を持つ。しかし、国際情報戦において、沈黙は敗北を意味する。日本は「自慢することを学ぶ」必要がある——それがロシアの教訓であり、日本の喫緊の課題である。
最終的に、日本が目指すべきは「いかなる情報攻撃にも屈しない強靭な情報基盤」である。そのためには、以下の三点が不可欠である。
日本人自身が、情報の真偽を見極める批判的思考力を義務教育から徹底的に育成する。同時に、英語だけでなく、中国語・ロシア語・アラビア語など多言語での情報収集能力を備えた人材を戦略的に育成する。情報戦は「受信」と「発信」の両輪で成り立つ。
日本は、米国のX(旧Twitter)や中国のTikTokに依存しない、独自の情報プラットフォームを持つべきである。これは「日本語のSNS」というレベルを超え、国際的に競争できる「日本のYouTube」「日本のAI検索エンジン」を意味する。これは巨額の投資を要するが、情報主権の根幹である。
最も困難だが最も重要なのは、日本人の「情報発信に対する心理的ハードル」を下げることである。日本は「出る杭は打たれる」文化だが、国際情報戦では「出ない杭は無視される」。イランのレゴ動画は、「笑い」と「誇り」を武器にしている。日本もまた、自国の成果を誇り、それを魅力的に語る文化を、国家を挙げて再構築する必要がある。
【一国民としての確信】
ラリー・ジョンソン氏がロシアに送ったメッセージは、日本に対する最も辛辣で最も建設的な警告でもある。「ロシアは地上戦では勝利しているが、情報戦では敗北している」——これはそのまま日本に置き換えられる。「日本は経済・技術・文化では優位にあるが、情報戦では敗北している」。この現実を直視し、30年後、50年後、80年後、100年後に生きる日本人が「あの時、日本は情報戦を本気で始めた」と誇れるように、今こそ、国家百年の情報戦略を、冷徹かつ情熱的に打ち立てよ。
【最後の警告】
これらの施策は、どれも「コストがかかる」「時間がかかる」「効果が目に見えない」という理由で先送りされてきた。しかし、情報戦の敗北は、軍事戦略の成功を完全に無効化する——それがロシアの教訓であり、日本の未来である。今やるか、後悔するか。その選択は、まさに「国家の番人」としての我々一人ひとりの覚悟にかかっている。