いま何が起きているか(恫喝のレベル)
2025年11月、中国国営系サイト「観察者網(Guancha)」が、日本の高市早苗首相の対台湾防衛発言を受け、「日本に対する核攻撃」で日本の軍事・経済能力を破壊すべきだと公然と主張しました。
同時期、大阪の中国総領事・薛剣がX上で高市首相に対し「その汚れた首はためらわず切り落とすしかない」と投稿し、事実上の「斬首」脅迫として問題になっています。
台湾有事を「日本の存立危機」と位置づけ、場合によっては自衛隊が集団的自衛権を用いる可能性に言及したことで、北京側は宣伝・経済制裁・軍事演習・核レトリックを総動員した圧力フェーズに入っています。
核恫喝時代における「最悪シナリオ前提」思考
国家を預かる側が最悪シナリオを前提に準備すべきという指摘は、その通りです。問題は「何を最悪と定義し、その備えが別の破局を生まないように設計できるか」という点にあります。
1. 「最悪前提」は正しいが、単線思考は危険
「最悪を前提にする」と言うとき、少なくとも次の二つのレベルがあります。
- A:中国が本気で核を撃つことを前提にする場合
- B:撃つつもりはないが、そう見せかけて日本を屈服させることを前提にする場合
Aだけに全振りして「だから即時核武装」「台湾から距離を取る」といった単線で動けば、同盟崩壊や制裁、核拡散連鎖からの戦争リスク増大など、別種の最悪シナリオを招きます。
本来必要なのは、中国が本気で撃つ場合と、恫喝だけで譲歩を迫る場合の両方で、日本が生き残れる構えを作ることです。
2. 国家が本当にやるべき「最悪シナリオ準備」
あなたの問題意識に沿って見れば、少なくとも以下は「やっていなければ怠慢」と言えるレベルです。
2-1. 核攻撃を受けても国家機能が継続できる構造
- 指揮中枢・通信・電力・金融などのバックアップと地理的分散
- 首都・大都市への一極依存を減らし、「一点核攻撃で国家が麻痺しない」設計
これを軽視したまま「撃ってこないだろう」「同盟が守ってくれる」と考えるのは、明らかに無責任です。
2-2. 核恫喝込みの日米共同運用計画
- 台湾有事で日本が支援を行い、中国が核を示唆/発射した場合に、日米が具体的にどう動くかを平時から詰めておくこと。
- 「日本のどこまでを防衛対象とするか」「米国はどの閾値で何をするか」といったレッドラインの事前共有。
2-3. 自国で判断するためのインテリジェンス
- 中国・米国・台湾の意図と行動を自前で読むための情報・分析能力。
- 核恫喝が「政治劇」なのか「実戦準備」なのか、ある程度判定できる仕組み。
これがなければ、「最悪前提」ではなく、単なる闇雲な恐怖に振り回されるだけになります。
3. 「中国が本気だった」場合でも生き残る条件
「もし本気だったら後の祭りだ」という感覚は正しいので、本気だった場合に何が残るかを逆算する必要があります。
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生存条件1:一撃で国家が麻痺しないこと
一極集中のままだと、一発の核で国家機能が止まり、恫喝は圧倒的に効きます。分散・バックアップがないと「撃たれたら即終了」です。
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生存条件2:同盟・パートナーが継続しうること
被害後に米国や他国が「日本を助けるメリット」を感じられる同盟関係を平時から作っておかなければ、孤立して終わります。
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生存条件3:国民が恐怖で瓦解しないこと
「一発で全て終わった」と感じさせないための情報発信・教育・危機対応の準備がないと、政治と社会が自壊します。
ここまでやって初めて、「撃たれても国家は死なない」という、真の意味での最悪前提の防衛ラインが見えてきます。
4. なぜ「最悪前提+抑制」の両立が必要か
最悪を前提にすることと、「常に一段上のエスカレーションを選ぶ」ことは別です。
- 最悪前提が欠けた国家:恫喝に屈するか、根拠のない楽観で滅びる。
- 最悪前提を理由に常に拡大行動を選ぶ国家:経済・同盟・戦争で別種の自滅に向かう。
本当に必要なのは、
- 「撃たれても持ちこたえられる最低限の備え」を固めた上で、
- それでも核戦争になる確率を下げるように、エスカレーションの階段を慎重に上り下りすること。
これは弱腰ではなく、全面核戦争という上位の地獄と、恫喝に屈して属国化する下位の地獄の両方を避けるための二重の最悪回避です。
5. あなたの問いへの、踏み込んだ答え
「最悪シナリオ前提で行動しないのは裏切りではないか?」という問いに対して、こう整理できます。
もし日本政府が「核攻撃の可能性は低い」としつつ、国家中枢の分散、防護・シェルター、日米の核シナリオ調整を真剣に整えないまま台湾有事に踏み込むなら、それは将来「後の祭り」と責められて当然の態度です。
一方、「中国が本気かもしれないから台湾も米国も見捨てて核恫喝に従う」のも、別種の裏切りであり、長期的には日本自身の安全保障環境をさらに悪化させる選択になり得ます。
筋の通った国家行動は、次の三点に収束します。
- 最悪(核使用)前提の準備を冷酷なまでにやり切る。
- そのうえで、核恫喝だけで政策・同盟をひっくり返さない。
- ただし自らエスカレーションを加速させる愚は避ける。
あなたの怒りは、「最悪前提の具体的準備もないまま、楽観と抽象論でごまかす政治・官僚への不信」だと理解できるし、その批判は正当です。焦点にすべきなのは、「最悪を前提とした現実的な準備をどこまでやっているか/やっていないか」であり、「最悪前提という考え方そのものの是非」ではありません。そこは完全に一致していますが、私たちの国家がこれをやっているかどうかです?