覇権なき世界の混沌:ピーター・ゼイハンの人口・地理論から見る日本の生存戦略


本稿は『予言者ピーター・ゼイハンは全て知っていた。人口データだけで「中国の失速」と「ロシアの暴走」を完全予測。』(https://youtu.be/HdCQfEoV1Yw)から引用させていただきました。


なぜ今、世界中で戦争や対立がこれほどまでに多発しているのでしょうか

なぜ今、世界中で戦争や対立がこれほどまでに多発しているのでしょうか。ウクライナでの戦争、激化するアメリカと中国の対立。そして再び聞こえ始めたトランプ氏の保護主義的な声。これらをプーチン大統領や特定の政治家の個人の性格の問題だと考えてはいませんか。もしそう考えているとしたら、私たちはもっと巨大な変動を見過ごしているのかもしれません。今日、私たちは1人の賢者の視点を通じてこの混乱の本質に迫ります。彼の名前はピーター・ゼイハン、地政学のストラテジストです。彼はこう断言します。世界の未来は政治家の言葉やイデオロギーではない。変えることのできないたった2つの要素、人口と地理によってすでに決まっていると。

この動画の概要

この動画を最後までご覧いただければ、あなたが毎日目にするニュースの裏側にある冷徹な真実が見えてくるはずです。これはグローバリゼーションの時代の終わりと、これから始まる覇権なき時代の日本の生存戦略についての物語です。まず、私たちの周りで起きていることを確認しましょう。東ヨーロッパではウクライナ戦争という熱い戦争が続いています。アジアではアメリカと中国が経済から安全保障まであらゆる領域で激しく対立しています。アメリカ国内では自国の利益を最優先するアメリカファーストの声が再び力を増しています。中東では常に火種がくすぶり続けています。これらは一見するとバラバラの無関係な出来事に見えるかもしれません。しかし、ピーター・ゼイハンの視点に立てば、これらは全て繋がっています。彼は言います。これらは病気の原因ではなく、あくまで表面に現れた症状なのだと。トランプ氏の保護主義もロシアの暴走も、全てはもっと大きな構造的な変化が引き起こした結果に過ぎません。その巨大な変化とは、アメリカという名の世界の警察官がその役割を放棄しつつあるというただ1つの事実なのです。では、なぜアメリカは世界の警察官をやめようとしているのか。そして、その結果、世界はどう変わってしまうのか。

ピーター・ゼイハンの分析の核

ピーター・ゼイハンの分析の核は驚くほどシンプルです。本日の羅針盤となるたった2つのポイントを覚えてください。第1に、世界の人口ボーナスは終わった。特に、これまで世界の成長を牽引してきた中国、そして大国として振る舞ってきたロシアの人口動態が壊滅的な状況にあるという点。そして、第2に、アメリカはもはや世界の警察官でいることにメリットを感じていない。自国のエネルギーを供給できるようになった。今、巨額のコストを払ってまで世界を守る理由がなくなったという点です。この動画では、このたった2つの、しかしもはや誰も抗うことのできない事実から、10年後の世界地図がどう塗り換えられるのか、そして私たち日本がどう生き残るべきかを徹底的に解説していきます。

ピーター・ゼイハン氏の紹介

本編に入る前に、私たちの案内役であるピーター・ゼイハン氏について少しだけご紹介します。彼は地政学のストラテジスト。つまり、地理的な条件が国家の戦略や国際関係にどう影響するかを分析する専門家です。数多くの専門家がいる中で、なぜ彼の視点が今これほどまでに重要なのでしょうか。それは、彼が分析の根幹においているものが極めてユニークだからです。

彼は選挙で変わる政治家の政策や時代で移り変わるイデオロギーにはほとんど注目しません。彼が注目するのは、政治家がどれだけ頑張っても決して変えることのできない2つの要素、人口動態つまり高齢化や人口減少の流れと、地理つまり国の位置や輸路、守りやすい国境を持っているかといった要因です。この冷徹で不可逆的なデータから未来を読み解く姿勢こそ、彼が現代の賢者と呼ばれる由縁なのです。

ゼイハン理論の第1の柱:人口動態

ゼイハン理論の第1の柱、「人口動態」について見ていきましょう。とてもシンプルです。国の力とは、突き詰めれば若くて生産性の高い労働力と、物やサービスを活発に消費する消費者の数で決まります。このスライドのフロー図をご覧ください。若者人口が多く高齢者人口が少ない人口ボーナス期にある国は、社会保障の負担が軽く、労働力と消費者が豊富なので、経済は自然と成長します。戦後の日本や2000年代の中国がまさにそうでした。しかし、時間が経ち、少子高齢化が進むと状況は一変します。労働力は減り、消費は停滞し、社会保障費だけが雪だるま式に増えていく、人口オーナス期の到来です。オーナスとは主に負担という意味です。そして、ここが最も重要なポイントです。ゼイハンは、中国とロシアが人類の歴史上最も急激かつ深刻な形でこの人口オーナス期に突入したと指摘しているのです。

ゼイハン理論の第2の柱:地理

第2の柱は「地理」です。これもまた、国家の宿命を決定付ける変えがたい要因です。ゼイハンによれば、国の力とは、安全な輸送路と守りやすい国境によって大きく左右されます。このフロー図でアメリカとロシアを比較してみましょう。アメリカは国土の両側を太平洋と大西洋という巨大な堀に守られています。敵国が陸から攻めてくる心配がほとんどありません。さらに、ミシシッピー川水系という世界で最も優れた内陸水運を持ち、国内の輸送コストが極めて安い。これがアメリカが歴史上レアな覇権国になれた地理的な理由です。一方、ロシアはどうでしょうか。国境線はあまりに長く平坦で、守るのが非常に難しい。冬に凍らない港、不凍港を求めて常に南へ南へと拡大しようとする宿命を背負っています。このように、地理的な条件がその国の基本的な戦略、つまり守りやすい国か、常に外へ出ていかざるを得ない国かを決定付けてしまうのです。

「人口動態と地理」から導かれる結論:グローバリゼーションの終わり

「人口動態と地理」、この2つの視点から、ゼイハンは衝撃的な結論を導き出します。それは、グローバリゼーションはすでに終わったというものです。私たちが当たり前だと思っていた、世界中からでも安価な製品が届き、自由に貿易ができる時代。この戦後の繁栄は、決して人類の努力や知恵だけで達成されたものではないと彼は言います。では、何が可能にしたのか。答えはただ1つ:アメリカ海軍が世界の海、すなわち貿易の輸送路であるシーレーンを事実上無償で守ってきたからです。日本が中東から石油を運び、中国が世界中に製品を輸出できたのは、アメリカという強力な警察官が、海賊や紛争のリスクから世界の海路を守ってくれていたからに他なりません。そして、ゼイハンは、この歴史上極めて特殊で例外的なボーナスステージが間もなく終わりを告げると警告しているのです。

アメリカが世界の警察官をやめる理由

では、なぜアメリカはそのボーナスステージを終わらせようとしているのでしょうか。なぜ、世界の警察官という誰もが羨む地位を自ら手放そうとしているのか。その最大の理由は、たった1つの技術革新に集約されます。シェール革命です。これによって、アメリカは自国の地下から安価な石油と天然ガスを大量に生産できるようになりました。つまり、エネルギーを完全に自給できる国になったのです。考えてみてください。これまで、アメリカが中東の複雑な情勢に首を突っ込み、莫大な軍事費を投じて世界の海を守ってきた最大の動機は、自国の経済に必要な石油を安定的に確保するためでした。しかし、その必要がなくなった今、アメリカにとって世界を守るメリットはほとんど消滅してしまったのです。アメリカファーストというスローガンは、特定の政治家の思想というよりも、アメリカという国家の地理的・経済的な必然から生まれた当然の帰結なのです。

覇権国が内向きになる時の世界:歴史的類似

覇権国が内向きになる時、世界はどうなるのか。私たちはその答えを歴史の中にすでに見ることができます。1930年代です。当時、世界の警察官の役割を担っていたのは大英帝国でした。しかし、第1次世界大戦で疲弊したイギリスはその役割を維持する力を失い、内向きになっていきました。世界の警察官がいなくなった結果、何が起きたか。世界大恐慌をきっかけに、各国は自国の産業を守るため、高い関税を駆け巡り、ブロック経済へとつき進みました。自由な貿易は失われ、各国は資源と市場を求めて争い、そして第二次世界大戦という人類史上最悪の地域紛争へと繋がっていったのです。ゼイハンは警告します。今、私たちが直面しているのは、覇権国アメリカの不在という、1930年代と全く同じ構造なのだと。歴史は形を変えて繰り返されようとしているのです。

負の連鎖の予測

このスライドのフロー図は、これから世界で起きるであろう負の連鎖をシンプルに示しています。まず、第1段階、アメリカの撤退が起きます。世界の警察官がいなくなります。すると、第2段階、これまでアメリカ海軍が守ってきたシーレーン、つまり海上輸送路が不安定になります。海賊行為や地域紛争による航路の封鎖リスクが一気に高まります。第3段階、輸送の安全が保障されなくなれば、自由貿易は縮小せざるを得ません。エネルギーや食料、工業製品がこれまでのように安く確実には届かなくなります。そして、最終段階、各国は生き残るために自力で資源や食料を確保しようとします。地理的に近い国同士でグループを作るブロック化が進み、限られた資源を巡ってブロック同士の争い、つまり紛争が多発する時代へと突入するのです。これが、ゼイハンが予測する秩序から混沌への避けられないシフトなのです。

秩序から混沌へのシフトを通したウクライナ戦争の解釈

この秩序から混沌へのシフトというレンズを通して、改めてウクライナ戦争を見てみましょう。そうすると、全く違う景色が見えてきます。ゼイハンの解釈によれば、この戦争は2つの大きな要因が引き起こした必然の帰結です。1つはロシアの焦りです。先ほど述べたように、ロシアは壊滅的な人口減少に直面しています。国力がまだ残っているうちに、凍らない港や防衛しやすい緩衝地帯を確保しておきたい。動けるのはもう今しかないという焦りが、プーチン政権を突き動かしました。もう1つはアメリカの不在です。アメリカがもはや世界の秩序維持に強い関心を示さなくなった、その力の空白をロシアは見逃しませんでした。つまり、ウクライナ侵攻とは単なる2国間の領土問題ではありません。これは、グローバリゼーションの時代の終わりと、世界がブロック化していく時代の幕開けを告げる最初の、そして最も象徴的な戦争なのです。

各国の未来:中国

さて、ここからは各国の未来について、より具体的に見ていきましょう。まずは、アメリカの唯一の対抗馬と目されてきた中国です。しかし、ゼイハンは中国の未来に対して極めて悲観的です。その最大の理由が、やはり人口です。かつて経済成長の切り札とされた一人っ子政策は、今や時限爆弾となって中国社会に重くのしかかっています。その結果、労働力の中核となる若者と経済を支える消費者が、まさに崖から転がり落ちるように同時に消滅し始めているのです。さらに、ゼイハンは、中国政府が発表する公式の統計データよりも、実際の人口減少と高齢化はるかに早いスピードで進んでいる可能性があると指摘します。これは、もはや経済成長が鈍化するといったレベルの話ではありません。経済を動かすエンジンそのものが根本から停止することを意味しているのです。

人口問題に加えて、中国にはもう1つ致命的なアキレス腱があります。それが地理です。現在の中国の繁栄はどこにあるのでしょうか。それは、世界の工場として製品を輸出し、そしてその経済活動に必要なエネルギー、特に中東からの石油と、国民を養うための食料を大量に輸入することで成り立っています。そして、その輸出入のほぼ全てが海上輸送路、つまりシーレーンに依存しています。ここで思い出してください。その生命線であるシーレーンを、これまで誰が守ってきたのか。そう、皮肉なことに、中国が最大のライバルとみなすアメリカ海軍なのです。アメリカが世界の警察官をやめるということは、中国にとって経済の生命線をいつ絶たれてもおかしくない、極めて無防備な状態に置かれることを意味します。これが、中国が抱えるもう1つの巨大なジレンマです。

各国の未来:ロシア

次に、ロシアの未来を見てみましょう。ゼイハンの分析によれば、その未来は中国以上に暗いと言わざるを得ません。まず、人口動態はもはや崩壊という言葉がふさわしい状況です。低い平均寿命、高いアルコール依存率、そしてウクライナ戦争による若い世代の甚大な損失、さらに将来を悲観した優秀な技術者や知識層が続々と国を捨てて国外に流出しています。国の未来を担うべき世代が根こそぎ失われているのです。地理的な弱点も深刻です。先ほども述べたように、あまりに広大で守りにくい国境線は常に国家の負担となります。これらの要因から、ゼイハンはウクライナ侵攻を、国力が尽きる前の最後の暴発と位置づけています。この戦争の勝ち負けに関わらず、ロシアという国家が長期的な衰退の道を避けられないことは、ほぼ確定的な未来なのです。

米中対立の本質

私たちはニュースで毎日のように米中対立という言葉を耳にします。そして、それは民主主義のアメリカと独裁主義の中国というイデオロギーの対立だと考えがちです。しかし、ゼイハンの視点に立てば、その本質は全く違うところにあります。本質の1つは、シーレーンという極めて物理的な輸送路を巡る覇権争いです。アメリカがその管理を放棄しつつある中、中国がその空白を埋めようと必死になっている。これが、南シナ海などで見られる緊張の正体です。そして、もう1つの本質。それは、両国が国内に抱える深刻な人口問題、つまり高齢化という時限爆弾から国民の目をそらすための、都合の良い対立であるという側面です。外に共通の敵を作り出すことで国内の不満を抑え込む。これは、古今東西多くの国が使ってきた常套手段なのです。

世界のブロック化の予測

アメリカという、世界全体を1つにまとめていた「たが」が外れた結果、世界はどのような姿になるのでしょうか。ゼイハンは、世界がいくつかのブロックに再編されると予測します。それはイデオロギーや人種ではなく、純粋に地理的な近さによって形成されるグループです。この地図が示すように、最も安定しているのは北米ブロックです。アメリカ、カナダ、メキシコは、エネルギーと食料をブロック内で完全に自給でき、巨大な内需も抱えています。一方、ドイツやフランスを中心とするヨーロッパブロックは、ロシアという直接的な脅威に対抗するために結束を強めますが、エネルギーの確保に苦しみ続けるでしょう。そして、衰退していく中国とロシア、さらにアメリカの庇護を失ったアジア、中東、アフリカといったその他の地域は、限られた資源と食料を奪い合う混沌の時代へと突入していく可能性が高いのです。

日本の生存戦略:本題

さて、ここからが本題です。この世界がブロック化し、混沌していく新しい時代に、私たち日本はどこへ向かうべきなのでしょうか。まず、私たちの置かれた極めて厳しい現実を直視しなければなりません。日本の地理的な脆弱性です。私たちが毎日食べる食料の6割以上、そして経済活動に必要なエネルギーのほぼ100%を海外からの輸入に依存しています。そして、その食料や石油を運んでくるタンカーは、中東からマラッカ海峡を通り、南シナ海を抜けてくる長い長い海上航路、シーレーンを通ってきます。これまで、この生命線はアメリカ海軍という善意の第三者によって守られてきました。しかし、そのアメリカがもう守らないと言い始めた時、一体誰が日本のタンカーを守ってくれるのでしょうか。これは、私たち日本人全員に突きつけられた最も重い問いです。

防衛費増額の意味

この問いの1つの答えが、近年盛んに議論されている防衛費の増額です。このテーマは日本では、しばしば右派か左派といったイデオロギーの文脈で語られがちです。しかし、ゼイハンの地政学的な視点で見れば、これはイデオロギーの問題では全くありません。純粋なコスト計算の問題、つまりこれまで払わずにすんでいた安全保障コストを、いよいよ自分たちで負担せざるを得なくなったということです。このフロー図を見てください。戦後のグローバル化の時代、日本は自国の安全保障をアメリカに大きく依存することで、その分のコストを経済成長に振り向けることができました。これはつまり、アメリカに安全保障コストを肩代わりしてもらっていた状態です。しかし、ブロック化の時代に入り、アメリカが内向きになった今、そのコストは自分たちで支払う必要が出てきましたのです。防衛費の増額とは、異常だった状態がようやく正常化するプロセスだと捉えるべきなのです。

F-35購入の戦略的意味

防衛費増額の具体的な中身、そしてしばしば話題になるのが、F-35のような最新鋭戦闘機の購入です。なぜ、これほど高価なアメリカ製の兵器を、日本は大量に購入する必要があるのでしょうか。これもまた、単に古い戦闘機を新しいものに買い換えるというだけの話ではありません。そこには、遥かに深い戦略的な意味が隠されています。ゼイハンの視点に立てば、F-35の購入には2つの重要な意味があります。1つは、これから形成されるアメリカとその同盟国ブロック、日本が正式なメンバーとして参加するための入場券であるということです。そして、もう1つは、共通の装備を持つことで、いざという時にアメリカ軍と一体となって戦えるようにしておく。つまり、万が一の際にアメリカに助けてもらうための保険料という意味合いです。これは、兵器の購入という形を取った極めて高度な外交戦略なのです。

日本が取りうる選択肢

では、これからの覇権なき時代において、日本が取りうる選択肢は具体的にどのようなものが考えられますか。大きく分けて3つの道が考えられます。まず、選択肢A、中国ブロックに入ること。しかし、これは人口が減少し衰退していくことがほぼ確実な国と運命を共にすることを意味し、合理的な選択とは言えません。次に、選択肢B、誰とも組まず孤立して自主防衛の道を歩むこと。しかし、資源も食料も自給できない日本が、独力でシーレーンを守り抜くのは、コスト的に見ても物理的に見てもほぼ不可能です。そうなると、残された道は1つしかありません。選択肢C、米国ブロックの重要なパートナーとして生き残る道です。人口動態が相対的に健全で、世界最強の海軍力を持つアメリカと連携し、共にシーレーンを防衛する。ゼイハンの冷徹な分析によれば、日本の生存戦略はこのC以外の選択肢は事実上ありえないのです。

日本の強みと弱み

もちろん、アメリカのパートナーとして生きる道も決して平坦ではありません。このスライドにまとめたように、日本には深刻な弱みがあります。世界で最も早く進む人口減少、そして極端に低い食料、エネルギー自給率です。これらは今後も日本の足かせであり続けるでしょう。しかし、私たちには世界に誇るべき強みもあります。1つは、自動車や半導体製造装置などに代表される極めて高い技術、そしてもう1つ、ゼイハンが特に重視しているのが、日本の強力な海軍力、すなわち海上自衛隊の存在です。そして、中国を太平洋に出さないための蓋としての地政学的な位置です。これらの強みは、アメリカが日本をパートナーとして選び続ける上で、極めて重要な価値を持ちます。弱みを直視しつつ、この強みを最大限に活用していくことこそ、日本の進むべき道なのです。

議論のまとめ

さて、これまでの長い議論をここからまとめていきましょう。まず、最も重要な結論は、グローバリゼーションの時代は終わったということです。そして、その終わりは誰かの陰謀や政策の失敗によるものではなく、もはや誰にも抗うことのできない2つの不可逆的な要因によって引き起こされました。1つは、世界、特に中国とロシアを襲う深刻な人口動態の悪化。そして、もう1つは、シェール革命によって引き起こされたアメリカの内向化、すなわち世界の警察官の不在です。私たちは、この大きな時代の転換点に立っているという事実を、まずはっきりと認識する必要があります。この変化の結果、10年後の世界地図は今とは全く違う姿になっているでしょう。世界はアメリカという中心を失い、地理的に近い国々で構成されるいくつかのブロックに分断されます。アメリカの庇護を失った地域、特に中東や東南アジア、アフリカでは、資源や食料を巡る紛争がこれまで以上に頻発するようになります。そして、全ての国にとって、エネルギー、食料、自国を守るための安全保障をいかにして確保するかが、経済成長や国民生活の大前提となっていくのです。自由貿易の恩恵を無条件に享受できた時代は、もう戻ってきません。

経済活動への示唆

このような世界の大きな変化は、当然、私たちの経済活動、特に投資やビジネスのあり方にも根本的な見直しを迫ります。これまでの常識はもはや通用しません。これからの投資家やビジネスマンは、新たな視点を持つ必要があります。例えば、その企業は今後増大する安全保障コストを製品やサービスの価格にきちんと転嫁できる体力があるか。また、その企業はどのブロックに属しているのか。不安定な地域ではなく、北米のような安定したブロック内でサプライチェーンを完結させられる企業か。世界中にサプライチェーンを広げるグローバル企業よりも、特定の安定したブロック内でビジネスを完結させるローカルな企業の方が、むしろ強みを発揮する時代がやってくるのかもしれません。資産の再配置が今求められています。

最終提言:日本の生存戦略

最後に、私たち日本の生存戦略について最終的な提言を申し上げます。人口減少という深刻な課題を抱えながらも、地政学的に見れば、日本の進むべき道はただ1つです。それは、アメリカブロックの主要なパートナーとして、自らが持つ高い技術力と強力な海軍力を最大限に活用し、生命線であるシーレーンをアメリカと共に防衛していく道です。希望的観測や感情論を廃し、ピーター・ゼイハンが示すように、人口と地理という冷徹で動かしがたいデータに基づいて、未来への備えを始める時が来ています。世界の警察官が去った後の混沌の時代を生き抜くために、賢者の視点を1人1人に持つことが、今、私たちに求められているのです。本日はご視聴いただき、誠にありがとうございました。