⚡ 円の「錨」って何?
これからの5年(2026~2031年)で日本人がやるべきこと
[ 物事を分解して考える・仕組みを見抜く・得する人と損する人・実際にどう動くか ]
本稿は『わかったわかった、円安の話するから落ち着けって』(https://youtu.be/mKOgaYmzAAY)からヒントをいただき、それを元にして「私たち国民」に何ができるのかを考えていきます。
1. まずは「なぜ円を持つのか」を4つの視点で分解する
日本政府がこれから何をすべきかを考える前に、まずは「金利差が原因」とか「日銀が買っているから」みたいな表面的な説明はいったん置いておきましょう。もっと根本的に、「円がなぜ価値を持つのか」を4つの軸で考えてみます。
軸A · 「使うため」か「持っておくため」か
円は、取引(つまり貿易の決済や旅行での支払い)に使われているのでしょうか? それとも、価値を保存するため(準備通貨として、あるいはキャリートレードの対象として)持たれているのでしょうか? 今の日本は取引目的の需要が過去にないほど低いのに、海外に持っている資産(対外純資産)はものすごく大きいという状況です。
軸B · 国内での買い物力 vs. 海外での為替レート
円安になると輸出をする企業は助かりますが、国内で暮らす人の実質的な賃金は下がってしまいます。日本政府は長い間、国内の購買力よりも輸出競争力(安く売ること)を優先してきました。でも、そろそろその優先順位を変えていく必要があります。
軸C · ものづくり(製造業) vs. デジタルや無形の経済
日本の製造業の黒字は、中国やアメリカとのEVや電池の競争で減ってきています。その一方で、デジタル分野での赤字(GAFAへの支払いやクラウド利用料、ソフトウェア特許料など)は年間5兆円を超えています。これは構造的にドンドンお金が外に流れ出ている状態です。
軸D · 国の財務状態 vs. 国民の貯蓄
日本の政府の借金はGDPの260%以上もありますが、民間(私たち国民)は1,100兆円というものすごい額の金融資産を持っています。つまり、国としての帳簿はめちゃくちゃ赤字なのに、国民は結構お金を持っているという不思議な状態です。この二つをつなぐ役割をしているのが円なんです。
ここがポイント: 今の円は「借金の通貨」なんです。つまり、世界の市場が円の実力を評価して持っているのではなく、政府が国民の貯蓄を国債に無理やり向けさせているから、なんとか成り立っているにすぎません。本当に国民が「円を持っていよう」と思えるようにするには、日本は円を、これからの生産性やデジタル分野の力を背景にした「資産としての通貨」に変えていく必要があります。
2. 長期的な流れと、ほかの国と比べてみる
🔹 見えにくい構造:「見せかけの黒字」と「本当の赤字」
日本の経常収支(海外とのお金のやり取り全体)は黒字になっています。でも、その黒字の90%は海外投資から得た配当や利子であって、モノを売って稼いだお金じゃないんです。これは「家賃収入で生きている人」みたいなものです——昔の製造業で築いた財産で今は食いつないでいる状態。しかも、エネルギー価格が上がったここ5年のうち3年は、モノの貿易では赤字になっています。
🔹 具体的に見てみよう:「デジタル分野での貿易赤字」
日本は毎年6兆円以上を海外のデジタルサービス(AWSやGoogle Cloud、Microsoft、Adobe、Metaの広告など)に支払っています。これは、日本の中で新しい価値を生み出すことなく、ただただ海外にお金が流れ出ている状態です。例えば韓国では、NaverやKakaoに国内でクラウドサービスをやらせることを義務付けて、データやお金が外に出ないようにしました。日本も真似できるところはあるはずです。
🔹 スイスとアメリカと比べてみる
- スイス(中立国で安全な避難先):スイスは金利で通貨を支えるのではなく、銀行秘密の法的な保護(歴史的なもの)と、大量の金や資源を背景に通貨の信用を保っています。日本にはそういう資源がありません。
- アメリカ(基軸通貨ドル):アメリカは軍事力、巨大な債券市場、そして技術の強さ(AIや半導体)でドルを支えています。日本にも技術はありますが、それをビジネスとしてうまく世界に売り込むことができていません。
- 日本の立ち位置:日本は世界で一番大きな対外純資産(3兆ドル以上)を持っているのに、その資産の平均利回りは2%にも満たないんです。なぜかというと、ほとんどを低い利回りのアメリカやヨーロッパの債券に置いているからです。これはお金の使い方として戦略的に失敗していると言わざるを得ません。
🔹 2028年に迫る人口問題
2028年までに、日本の働く世代の人口は6,800万人を切ります。そうなると、国内の貯蓄(国債を買う主な担い手)も減っていきます。もし政府が国内の貯蓄者に代わって、本当に円を信頼してくれる外国人投資家を呼び込むことができなければ、国債の市場は大きく揺らぐでしょう。
3. 誰が得をするのか・将来の予測と実際にできること
🏆 今(2026年)のところ、得をしている人・損をしている人
- 得をしている人:円安で利益を出せる大きな輸出企業(トヨタ、ソニー、商社など)。それから、円を売って儲けようとしている海外の投資ファンド。
- 損をしている人:普通の日本の家庭(実質賃金は2019年と比べてドル換算で15%も下がっています)。輸入に頼っている中小企業。それから、国内の資産で年金をあてにしている将来の高齢者。
⏳ これからの5年間(2026~2031年)で起こりそうなこと
予測1(国際的な動き):2028年までに、アメリカの中央銀行(FRB)は金利を2.5~3.0%くらいに引き下げるでしょう。その一方で、日本の日銀は輸入物価の上昇を抑えるために金利を1.5%くらいに上げざるを得なくなると見られます。この金利の差が縮まることで、日本には一度だけ体制を立て直すチャンスが訪れます。
予測2(ルールや仕組みの話):日本政府は3年以内に「デジタル主権を守る税制改革」をやらなければなりません。具体的には、データを国内で保管して、日本の産業データを使って独自のAIを開発する企業には、法人税を最大30%も減らすといった大きな優遇措置を取る必要があります。
予測3(お金の政策):日銀は「二段階の金利制度」を始めるかもしれません。民間銀行が余分に持っているお金にはマイナス金利(お金を貸し出して市場に回すように促す)をかけ、その一方で、長期の国債にはプラスの実質金利(インフレ率+0.5%)を付けて、海外の大きな年金基金(例えばGPIFやノルウェーの政府年金基金)にお金を入れてもらおうとするでしょう。
⚡ 政府が実際にやるべきこと(口だけじゃなく)
- アクション1(産業):「ものづくりとデジタルの融合」を強制する——日本で生まれるすべての工場のIoTデータは、必ず日本にあるサーバーで処理するというルールを作る。そうすれば、デジタル分野での赤字を埋める新しい「データの貿易黒字」が生まれます。
- アクション2(お金の面):将来のAIや量子技術の特許を担保にした「国家レジリエンス債(強靭化国債)」を発行する。利子はインフレに連動させる。目標は5年間で20兆円です。
- アクション3(ルールの面):海外の配当に対する法人税の優遇を見直す——今は、日本企業が海外で儲けたお金を日本に戻すときに、追加で税金を払わなくていいという仕組みになっています。ここに「早期還流プレミアム」という制度を導入する:2年以内に戻せば5%の課税、海外に置いたままなら25%の課税にする。こうすれば、お金が国内に戻ってきて円を支える力になります。
🧑💼 私たち一人ひとりができること
政府の動きをただ待っているだけではダメです。「円リスク」をうまく分散して、貯蓄の30%を
(a)国内のインフレ連動債、
(b)国内の半導体やAIのスタートアップの株、
(c)スイスフランや金などでの小さなヘッジ
——に回すことを考えてみてください。でもそれ以上に大切なのは、円で生活しながらも、ドルで評価されるようなデジタルスキルを身につけることです。これが、大きな経済の失敗に対する小さな保険になります。
4. まとめ — この考え方から何を学べるか
📚 この分析から学べる「考え方」と「情報の集め方」
- 1. 「お金」を4つの役割に分解して考える:交換の手段、価値の保存、計算の単位、そして将来の支払いの約束。
→ 円は「交換の手段(貿易)」と「価値の保存(インフレで目減り)」ではうまくいっていなくて、「計算の単位」としてだけなんとか使われている。このずれが問題の根本です。
- 2. 「見えない流れ」に目を向ける:みんなが貿易収支に注目しますが、私はあえてデジタル収支と所得収支を見るように言いました。本当にお金が動いている場所は、ニュースが取り上げないところにあります。
- 3. 「同じカテゴリーでも戦略が違う」を比較する:スイス(資源で支える)、アメリカ(技術と軍事で支える)、韓国(データを国内に閉じ込める)。日本は「技術の主権+金融の深さ」を選ぶことができます——でもそのためには、「安い円」に頼る習慣をやめなければなりません。
- 4. 「いつ起きるか」を意識して予測する:私は2028年(人口の崖)と2028年(FRBの利下げ)が重なるタイミングを出しました。日付なしの予測は意味がありません。あなたの考える枠組みには期限が必要です。
- 5. 最後は必ず「誰が本当に苦しむのか」を考える:政府が何もしなければ、儲かるのは海外のヘッジファンドで、苦しむのは日本の年金生活者と国民全員です。もしここで挙げた行動を取れば、儲かるのは国内のAIエンジニアで、苦しむのは古い体質の大きな企業——でもそれって健全な変化だと思いませんか?
現場の視点からの最後の一言:円の価値は「よくわからない経済の話」ではなく、政治がどう判断するかの問題です。今の政府は輸出を優先しています。もしこれからの5年で「賃金を上げる・知的財産を重視する」という方向に舵を切れば、円は140~150円台で落ち着き、実質的な買い物力も回復するでしょう。逆に迷い続ければ、1ドル180円は特別なことではなく、2031年には普通になっているかもしれません。私たちにできることは、日銀の『四半期展望』や経済産業省の『デジタル産業戦略』を、見出しだけではなく中身を読むことです。データはいつでもそこにあります。あとはそれをどう読み解くか、です。
⚠️ 免責事項
この記事を読む前に、ぜひ知っておいてほしいこと
この記事は、一個人の見解や分析をもとにした情報提供を目的として書かれています。以下の点をあらかじめご理解いただいたうえでお読みください。
- 投資の助言ではありません:ここに書かれている内容は、株や債券、為替などの具体的な売買を推奨するものではありません。実際にお金を動かすときは、必ずご自身の判断と責任で行ってください。
- 将来の予測には不確実性があります:2028年や2031年といった将来の出来事については、多くの前提や想定に基づいて話をしています。実際の結果は、ここで書いた通りになるとは限りません。
- 情報は執筆時点のものです:この記事で使っているデータや数字は、2026年7月時点で入手可能な公開情報をもとにしています。その後の状況の変化によって、内容が古くなる可能性があります。
- 特定の立場を代弁するものではありません:この記事は、特定の政治団体・企業・業界団体などを支援・批判することを意図したものではありません。
- すべての読者に当てはまるわけではありません:ここで提案している考え方や行動は、あくまで一つの視点です。あなたの状況やリスク許容度によって、最適な選択は異なります。
最終的な判断は、すべてご自身で行ってください。
この記事を読んだことで生じたいかなる損害についても、筆者および公開者は責任を負いかねます。あらかじめご了承ください。