このレポートは「Proactive Thinker」(https://www.youtube.com/@ProactiveThinker)さんの動画から引用させてもらいました。
日本国民の大半が同じような感じを持っていると思います。
「日本は米ドルに対して『宣戦布告』するのか!?」
ドナルド・トランプは、日本に対して日本経済を完全に破壊してしまう貿易協定への署名を強制し、日本に恥辱を与えました。ですので、日本は必死で自国経済を救おうとしています。そして、これはつまり日本が中国、インド、ロシア、それに他のBRICS諸国のような国々とより親密な関係を築こうとしている理由でもあります。それは、日本がBRICSに加盟する準備を進めている可能性があることを意味するかもしれません。しかし、そこには問題が一つあります。BRICSのすべての目的は、米ドルを世界の基軸通貨の地位から引きずり下ろすことなのです。ですからBRICSに加入することで、日本はドルの利用をやめ、代替通貨への移行を始めることになるかもしれません。自国通貨や、あるいはその他の通貨を世界貿易で使い、米ドルに代えて取引するようになるかもしれないのです。
では、本当の問題は「日本はBRICSに加入するのでしょうか?」ということです。何が起きているのかを理解するためには、日本経済全体がどう機能しているのかを理解する必要があります。
日本経済はアメリカの消費者の肩の上に築かれてきました。1945年以降の日本のビジネスモデルはとても単純で、日本は安価でより良い製品を作り、それをアメリカで販売する、というものでした。そしてアメリカの企業は日本企業と競争できませんでした。なぜなら日本人は単純に、より良い製品を作り、より安く売っていたからです。
そしてそれはうまくいきました。日本のGDPは飛躍的に、非常に速いスピードで増加し、世界で2番目に大きい経済大国となったのです。しかし1980年代、アメリカは「このままではいけない」と気づくことになりました。日本はアメリカの消費者市場を完全に支配していたのです。そしてその原因は「ドルが非常に強い」ことでした。「私たちはドルを弱くしなければならない」となったのです。
しかしロナルド・レーガンは非常に賢い大統領でした。彼は、もし他の主要な経済国の同意なしにドルを弱くしようとした場合、それは彼ら(諸外国)に傷をつけることになり、世界の基軸通貨としてのドルの地位も脅やかす可能性があることを理解していました。それゆえ、レーガンは1980年代に世界最大の経済国のリーダーたちを招き、プラザ合意に署名(半強制的に)させました。彼らはドルを他の主要通貨に対して弱くしたのです。そしてこれは、日本なしには不可能でした。当時、日本は世界第二位の経済規模を誇っており、日本抜きではこの合意は成立しない状況でした。
突然、日本円はドルに比べて格段に強くなりました。それはつまり、日本製品の価格がより高くなったことを意味します。日本のGDPは一時的に50%や100%増というように急伸し、バブルとなり、しかし結果として日本経済全体を完全に崩壊させてしまいました。なぜならビジネスモデルがもう機能しなくなったからです。日本車はもうかつてほど安くありませんでした。これは、日本経済の根幹となっていた本質的な土台を崩壊させてしまいました。日本はその危機から30数年、未だに回復していません。
ここ5年間でも日本のGDPは5兆ドル(約736兆円)から4兆ドル(約589兆円)にまで落ち込んでいます。米国のGDPが過去5年で20%も下落したとしたら、完全な大災害だと呼ばれるでしょう。しかし、それが日本に起きているのです。
とはいえ、米国が日本企業のために市場を開放している限り、日本はドルを喜んで使い続けてきました。なぜなら、それによって経済をある程度維持し続けることができたからです。
しかし、ここで日本経済の根本的な問題が浮かび上がります。米国最大の企業を見ればメインはソフトウェア企業、たとえばMicrosoft、Apple、Alphabet、Amazon、Meta(旧Facebook)です。しかし日本最大の企業を見ると、1970年代~80年代に日本を支配したまさに同じ企業たち、トヨタ、三菱、日立、ソニー、任天堂、これらは主にハードウェア生産の企業です。
なぜなら、1995年に米国でインターネット革命が起きた時、日本は現代史最大の危機に直面していました。それは米国が2008年に経験した危機に匹敵するものでした。そのため、日本はインターネット革命に乗り遅れ、世界的な主要テクノロジー企業を1つも生み出すことができませんでした。
日本最大の企業であるトヨタですら価値は2,500億ドル(約36兆8,000億円)ですが、米国で最大の企業Nvidiaは4兆5,000億ドル(約662兆4,000億円)の価値があり、じきに5兆ドル(約736兆円)企業となります。
しかし問題は、日本が今AI革命にも乗り遅れつつあるということです。AIで利益を上げる唯一の方法は、ソフトウェアを作るか(最終プロダクトとしてです)、もう1つはAIのためのインフラ、つまりチップを設計または製造することです。世界最大の企業NvidiaはAI用のチップを設計していますが、設計だけでは十分ではありません。チップの製造も必要です。だからこそ、TSMC(台湾積体電路製造公司/台湾半導体製造)は1兆ドル(約147兆2,000億円)の価値を持ち、日本最大企業の約4~5倍にのぼります。加えて韓国のサムスンという企業も存在します。
そして、日本はこの分野もまったく押さえていません。どのAI用のチップ設計も製造も行っていません。したがって、近い将来、日本経済は回復する兆しもなく、いま目の前で起きている最大の革命(AI革命)から恩恵を受けることもできません。
それは、日本が最初に豊かになったビジネスモデルを変えるつもりがない、ということも意味しています。つまり「日本で車や基本的な電子機器を作って、アメリカに送り、安く売る。アメリカから得た米ドルで自国経済を回す」。しかし、トランプが日本と結んだ協定は、そのビジネスモデル全体を完全に崩壊させるものです。
ここでの戦略はこうです。日本はものを作り、それをアメリカで売ってドルを手に入れ、そのドルで世界から資源を買う。たとえば、中東などから石油を輸入します。なぜなら日本国内には資源がほとんどありませんから。
ところがドナルド・トランプは日本製品に15%の関税を課しました。関税が課される前なら、日本車を買うのは理にかなっていました。なぜなら、アメリカ車より日本車の方が、車種によりますが、たいてい5~20%安かったからです。そして日本車の方がアメリカ車と同等かそれ以上に信頼でき、しかも燃費も良かったのです。ですので、アメリカ人が日本車を買うのは合理的でした。
しかし今やアメリカ政府が人為的に日本車の価格を上げてしまったため、アメリカの消費者はアメリカ車でも日本車でも同じ価格を払うことになります。つまり、アメリカでの日本製品の需要は今後減少し、日本はアメリカ市場を失うことになります。
この協定の第二段階として、日本はアメリカに5,000億ドル(約736兆円)投資しなければならなくなりました。ただ一つ問題があります。日本はアメリカほど裕福ではありませんし、アメリカからも遠い国です。さらに日本経済はここ30年苦しみ続けてきており、たった過去5年でGDPが20%も失われたのです。日本に5,000億ドル(約73兆6,000億円)の余裕など本当にあるでしょうか?
さらに、日本の昨年の政府予算全体が7200億ドル(約106兆円)しかありません。それは日本政府の年間予算のほぼすべてに匹敵します。もし日本がこの金額をアメリカに投資しなければ、トランプは関税を25%にまで引き上げると警告しています。15%の関税ですら高すぎですが、25%になれば、どれほど深刻か考えてみてください。
では本当の疑問です。アメリカで売れなくなったとき、日本経済は今後どうやって動き続けるのでしょうか。アメリカ政府が日本車の価格を人為的に上げてしまった今、日本が価格を下げて競争力を保とうとしても、利益は出せません。価格を下げる意味さえありません。では日本は何ができるのでしょうか?どうやって壊滅から経済を救えば良いのでしょうか?なぜなら今は、日本経済を成長させる話ではなく、崩壊を防ぐ話だからです。
日本がやるべきことが2つありますが、日本自身も十分理解しています。まず第一に、自国製品を売る新たな市場を見つけなければなりません。アメリカで売れないなら、中国・インド・メキシコなど他所で売るしかありません。もちろん、アメリカに代わるだけの市場は世界にはありません。アメリカの消費者は非常に裕福で最大規模であり、1ヶ国で代替できる国はありません。しかし中国・インド・メキシコといった国々に売ることで、部分的にはカバーできます。
それに加え、日本がBRICSに入る道も現実味があります。アメリカ市場から十分な恩恵が得られなくなるなら、BRICS諸国に参加して協力を得るほうが得策です。
二つ目は、日本がアメリカに対して交渉力(レバレッジ)を持つことです。なぜトランプが日本にこんな協定を押し付けられたのか?それはアメリカが日本よりも圧倒的にレバレッジ(交渉力)を持っていたからです。日本には「受け入れるか、全て失うか」しか選択肢はありませんでした。
だからこそ日本は「カード」を持たないといけません。BRICSに加盟するぞとシグナルを送ることが、パワーバランスの変化を示す材料になります。つまり「アメリカが今よりも良い条件(以前のような関税ゼロ)を日本に提供しないなら、日本はBRICSに加わる」と暗に示し、それが基軸通貨としての米ドルに大きな脅威となります。
では本当に日本はBRICSに加盟するのでしょうか?もしアメリカが、以前と同じように関税ゼロの条件を日本に戻さないなら、日本がBRICSに加盟する可能性はどんどん高まっていくでしょう。