米国兵器・弾薬不足:【第2部:ウクライナ・イスラエル・中東・世界】
1. ウクライナ戦争への影響
- 最前線の防衛力低下:米国の155mm砲弾・防空ミサイル供給の一時停止・遅延により、ウクライナ軍はロシア軍の攻勢に対する火力と防空力の両面で重大な課題に直面。特に都市部の防空網が脆弱化し、ロシアによるミサイル・ドローン攻撃の被害が拡大。
- 戦線維持の困難:砲弾消費が極めて多い東部・南部戦線で、弾薬不足が前線維持や反攻作戦の最大の制約要因となっている。[読売新聞]
- 士気・国際支援への影響:米国の供給減はウクライナ軍の士気低下を招き、欧州諸国やNATO内でも援助疲れが拡大。今後の戦争継続能力への根本的な疑念も台頭。
- ロシアの優位拡大:兵站の隙間を突く形でロシアが局地的な攻勢を強化。軍需物資の確保で中国・北朝鮮・イランなどと連携強化の兆し。
2. イスラエル・中東(イラン等)への影響
- イスラエルの防空体制:ガザ・レバノン(ヒズボラ)からのミサイル攻撃増加で、米国の防空ミサイル支援が生命線。米国在庫逼迫のため、即応的な増援が難航し、イスラエルの防空網も薄くなる危険性。
- 対イラン抑止の変化:米国の兵器在庫減少は、イランによる代理勢力活用や軍事的冒険主義を誘発。ペルシャ湾・紅海・シリア等の緊張が高まる一方、米国の直接介入能力低下が露呈。
- サウジ・UAEなど湾岸諸国:米国兵器への依存度が高く、調達遅延・価格高騰の影響を直接受けている。自国生産や欧州・中国への調達シフトが検討される。
3. 世界的影響:多極化・武装競争の加速
- 欧州諸国の危機感:NATO東欧諸国では米国の供給減少を受けて自国生産能力拡大に奔走。兵器共同調達やEU域内生産強化の政策が急ピッチで進展。
- 中国・北朝鮮の台頭:米国の兵器供給体制の脆弱性を見た中国・北朝鮮は、地域覇権拡大や武力行使のハードルが下がったと判断。台湾・朝鮮半島での「既成事実化」行動リスク増大。
- グローバル・サウスの対応:インド・ブラジル・トルコなど新興国は米露欧以外のサプライチェーン確保や国産化を加速。国際兵器市場の多極化が進行。
- 国際安全保障秩序の再編:米国の供給能力低下は、従来の集団安全保障体制を揺るがし、「自力防衛」や新たな同盟形成(例:日英伊、豪印等)の動きが顕著化。
【表2】世界への主な影響まとめ
地域/国 | 主な影響 |
ウクライナ | 防衛力低下・前線維持困難・士気低下 |
イスラエル | 防空力の脆弱化・イラン脅威増大 |
欧州(NATO) | 兵器共同調達・自国生産強化 |
中東湾岸 | 米国依存からの脱却模索・調達遅延 |
中国・北朝鮮 | 軍事的冒険主義のリスク増大 |
日本・インド太平洋 | 米国依存のリスク顕在化・自律防衛志向強化 |
4. 結論と今後への展望
米国の兵器・弾薬不足は、単なるウクライナ・イスラエル支援の遅延に留まらず、世界の安全保障秩序を根底から揺るがしています。日本を含む同盟国は「米国依存の限界」を再認識し、備蓄・生産体制の強化、同盟国・パートナーとの協調強化を急ぐ必要があります。
これにより、今後数年間は兵器・弾薬の国際市場が「供給制約」と「価格上昇」の構造的時代に突入し、各国の防衛政策・外交戦略に大きな転換をもたらすでしょう。
主な参考文献:
JBpress,
読売新聞,
Pravda日本,
Bloomberg,
nippon.com